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損すると分かっているのに決断できない理由
例えば、ある人がギャンブルで10万円負けてしまった。ここでギャンブルをやめるのが合理的な判断であるが、その人はギャンブルを続けてしまう。なぜなら「10万円の損を取り戻そう」とするからである。そして、さらに損をしてしまう。
例えば、ある会社が、新規プロジェクトに1億円を投資した。このプロジェクトは、事前に期待した成果を上げられていない。ここでプロジェクトから撤退するのが合理的な判断であるが、なかなか撤退することができない。なぜなら、経営者は「1億円も投資したのに撤退するのはもったいない」という思考に陥るからである。しかも経営者は「プロジェクトが成功しないのは努力が足りないからで、もっと努力すればプロジェクトは成功する」という根拠のない考えを持ってしまう。そして、プロジェクトに追加で投資をしてしまう。そうこうしている間に、損失はさらに広がっていく。
このように、人は「損切り」するのが苦手である。
これは、心理学の「サンクコスト効果」(the sunk cost effect)と呼ばれる理論に基づいている。
私たちは、すでにある労力やコストを払っていると、それを無駄にしたくないために、さらに追加で労力やコストを投入してしまう傾向がある。これをサンクコスト効果と言う。引くに引けない状況に置かれたときに発生する効果である。
(内藤誼人(2008)『ビジネス説得学辞典―交渉を支配する986の戦略・理論・技法』ダイヤモンド社より引用)
サンクコスト(sunk cost)は、日本語で「埋没費用」と訳される。今までに費やしたコスト(資金や時間、労力)で、取り返すことができないコストをいう。
対策・対応策・対処法
- 人は「損切り」をするのが苦手ということを理解する(「サンクコスト効果」について知っておく)。
- 普段から、ゼロベース思考を心がける。
ゼロベース思考
ゼロベース思考とは、今までのことは忘れて、目的達成のために何をすべきか、白紙の段階から考えることである。
例えば、ある株式の銘柄を、株価2000円の時に買ったとする。今の株価は1500円である。このとき、株価が2000円に戻るまで株を持ち続けよう、と考えてはいけない。1500円という今の株価をベースに、ここから上がるのか下がるのかを考えて、株を売るのか売らないのか判断しなければならない。これがゼロベース思考だ。
参考文献
内藤誼人(2008)『ビジネス説得学辞典―交渉を支配する986の戦略・理論・技法』ダイヤモンド社
Boehne, D. M. & Paese, P, W. (2000). Deciding whether to complete or terminate an unfinished project: A strong test of the project completion hypothesis. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 81, 178-194