正月立つ春の初めにかくしつつ相し笑みてば時じけめやも(万葉集)

本文(原文)

正月立つ 春の初めに かくしつつ 相し笑みてば 時じけめやも

(むつきたつ はるのはじめに かくしつつ あひしゑみてば ときじけめやも)

現代語訳(口語訳)

陰暦正月を迎える、春のはじめに、このようにして(お酒を飲みながら)、お互いに笑顔をかわすことは、時節外れかなあ、いや、時節にふさわしい。

語句・文法の解説

本文 解説
正月
(睦月・むつき)
【意味】陰暦一月。
たつ
(立つ)
【文法】タ行四段活用の自動詞「立つ(たつ)」の連体形。
【意味】(月・季節などが)始まる。≪「立春」とは、春が始まる日のこと。≫
初め
かく
(斯く)
【品詞】副詞
【意味】このように。
しつつ 「し」はサ行変格活用の連用形。
「つつ」は接続助詞。
「・・・(し)ながら」という意味。例文の「かくしつつ」を意訳すると「お酒を飲みながら」となる。なぜなら、この例文は、宴(うたげ)で詠んだ和歌だからである。
相し
(あひし)
相(あひ)は「お互いに」という意味の接頭辞(動詞の上に付ける)。
「し」はサ行変格活用の連用形。
笑み
(ゑみ)
【文法】マ行四段活用の自動詞「笑む(ゑむ)」の連用形。
【意味】ほほえむ。≪声を出して笑う意を表すのは「笑ふ(わらふ)」≫
てば 完了の助動詞「つ」の未然形+接続助詞「ば」。この例文での「ば」は、順接の仮定条件(未然形の後に付くため。已然形の後に付く場合は、順接の確定条件)。
時じ
(ときじ)
【文法】シク活用の形容詞「時じ」の連用形(「時じく」の「く」が省略?)
【意味】時節外れだ。
けめ 【文法】助動詞「けむ」の已然形。接続は「連用形」+「けむ」。
【意味】〔過去推量〕~だっただろう。
やも 【文法】反語の係助詞「や」+詠嘆の終助詞(係助詞)「も」
【意味】~かなあ、いや~ない。(詠嘆と反語の意を表す)

出典

『万葉集』

詠み人:大伴家持(おおとものやかもち)≪奈良時代(平城京の時代)の貴族・歌人≫

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