国家的イベントに企業が協賛する理由

愛国心メッセージの効果

日本では、オリンピックや万博など、国家的なイベントが何度も開催されてきたし、今後も開催される予定である(2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博(招致活動中))。

国家的イベントには、企業が協賛する。なぜなら、企業に利益がもたらされるからである。

生まれる利益は、対価として受け取る金銭的利益だけではない。むしろ、協賛したことで赤字になるケースも多くある。

企業にもたらされる利益とは、企業イメージの向上である。

国家に協力する姿勢を見せることで、企業イメージを高めることができる。

これは、心理学の「愛国心メッセージの効果」(the effect of patriotic message)と呼ばれる理論に基づいている。

自分の祖国に対する愛情を愛国心という。この愛国心を喚起するようなメッセージを与えることにより、被説得者からの善意や協力を引き出す効果のこと。
セイターらは、レストランにやってきたお客に対し、勘定書と一緒に、「アメリカに祝福を」(God Bless America)、あるいは「一緒に立ち上がろう」(United We Stand)と書かれた愛国心を喚起するカードを手渡した。
すると、「いい日でありますように」(Have a Nice Day)と書かれたカードを渡されたお客に比べて、たくさんのチップを払ってくれることがわかったのである。

内藤誼人(2008)『ビジネス説得学辞典―交渉を支配する986の戦略・理論・技法』ダイヤモンド社より引用)

日本の場合

ただし、日本では、企業が愛国心を過度に強調するのは、ビジネスにマイナスに作用する可能性がある。第2次世界大戦の記憶が残っているからである。

例えば、アパホテルは、「南京大虐殺」「慰安婦の強制連行」を否定する書籍を客室に備えたことで中国外務省から猛抗議を受けた。DHCは、スポンサーを務める「ニュース女子」というテレビ番組の内容が右翼的であるとして、左翼勢力から不買運動を展開されるなどして批判を浴びている。

そこで、日本で「愛国心メッセージの効果」をビジネスに生かすとしたら、国家的イベントに協賛するのがベストということになる。

国家的イベントに協賛することで、日本人の愛国心をそれとなく刺激しているのだ。

対策・対応策・対処法

企業として国家的イベントに協賛したいと考えた場合、まず、これからどのような国家的イベントが開催されるのか、ニュースや新聞などで情報収集を怠らないことが必要である。

そして、協賛するための条件や手続きなどについて、役所などに確認して情報収集する必要がある。

このような情報収集は、遅くとも開催日の半年前までには終えておきたい(開催直前では、手続きを締め切っている可能性があるため)。

中小企業でも国家的イベントに協賛できるのか

国家的イベントに協賛できるのは、電通やトヨタなどの大企業だけではない。

中小企業でも、協賛することができる。

ここで、2016年の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)の事例を紹介したい。

三重県知事が代表を務めた官民一体の組織「伊勢志摩サミット三重県民会議」では、伊勢志摩サミットの関連事業を成功させるべく、協賛・応援事業を募集した。

以下が、協賛・応援の内容である。

伊勢志摩サミット 三重県民会議:協賛のご紹介

伊勢志摩サミット 三重県民会議:応援事業のご紹介

ご覧いただければ分かるとおり、中小企業でも協賛・応援できる内容ではないだろうか。

「伊勢志摩サミット三重県民会議」に協賛すれば、「当社は伊勢志摩サミットを応援しています」と堂々とアピールすることができる。

このように、中小企業であっても、国家的イベントに協賛することができるのだ。

参考文献

内藤誼人(2008)『ビジネス説得学辞典―交渉を支配する986の戦略・理論・技法』ダイヤモンド社

Seiter, J. S. & Gass, R, H. (2005). The Effect of Patriotic Messages on Restaurant Tipping. Journal of Applied Social Psychology, 35, 1197-1205.

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